Interview

東京大学大学院工学系研究科・坂田研究室様、あいち産業科学技術総合センター(瀬戸窯業試験場)様とヤマキ電器にて、製品の共同開発プロジェクトを行いました。
※本研究は生研支援センター「知」の集積と活用の場による革新的技術創造促進事 業(異分野融合発展研究)」の支援を受けて行いました。

そんな中、入社から2年目でその能力を認められ、研究開発者として大抜擢されたKさん。プロジェクト期間中の3年間のエピソードや、ヤマキ電器で働きながら感じた会社のことについて聞きました。

共同開発の概要を教えてください。

共同開発の概要を教えてください。
 

東京大学大学院工学系研究科・坂田研究室様で当時研究していた「カーボンナノチューブ」を活用したヒーターと、それを使った大型乾燥機の製品開発です。

年間で段階的に細かい製品を作って、それを合わせて大きな製品にしていきます。1年目はヒーター、2年目はそれを使った乾燥機、3年目はそれをさらに大型にしたもの…という形で、約3年間にわたって取り組みました。

東京大学大学院工学系研究科・坂田研究室様の方から製品の依頼を受け、製作したものをあいち産業科学技術総合センターの瀬戸窯業試験場(以下、瀬戸窯業試験場)様にお渡しして計測や分析を行う、という大きなプロジェクトでした。

具体的にはどのような製品ですか?

具体的にはどのような製品ですか?
 

食品を乾燥させるために使う「低温用遠赤外線セラミックヒーター」です。 セラミックヒーターは「エネルギーの消費が少ない」「急速な加熱が可能」というメリットがある一方で、「対象物によって効率や加熱・乾燥箇所にバラつきが出る」「水分を多く含むものには加熱・乾燥時間がかかる」といった弱点を持っていました。

従来のセラミックヒーターが持つ特徴を活かしつつ、デメリットの改善を実現したのが今回の研究開発です。

加熱・乾燥を均等に素早く行うために、照射面に工夫を施しました。幅広い波長を持ち、高い放射率を誇る「ナノカーボン材料」をスラリー…簡単に言えば「セメントのようなのり状のもの」にして、ヒーター表面に塗布します。

これにより、水分量や形状といった対象物の性質に左右されることなく、効率的な加熱・乾燥が可能になりました。製品試験では、「食品のうまみ成分(グルタミン酸)が1.5倍に増加」「2時間の乾燥ののち、従来品と比較して、重量の減少が48%から54%へと効率アップ」といった結果が出ています。

共同開発のきっかけを教えてください。

 

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はじめは、東京大学大学院工学系研究科・坂田研究室様と瀬戸窯業試験場様の間で立ち上がったプロジェクトでした。製品を形にするにあたって、「赤外線セラミックを取り扱うノウハウを持っている企業」として、瀬戸窯業試験場様がヤマキ電器の名前を挙げてくださったことがきっかけでした。

 

研究開発に必要な技術を持っている企業が少ない中で、ご担当の方が「ヤマキ電器さんの実績と技術なら大丈夫」と口添えしてくださったそうです。

どのような経緯でKさんが選ばれたのでしょうか?

 

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入社当初は製造部で働いていました。なので、開発には関わっていなかったんです。ですが、検査や品質管理のスキルが上がってきたこと、私の仕事に対する姿勢や適性などを評価していただいて、このプロジェクトに参加することになりました。

 

選んでくださった上司いわく、「新規の開発に関わることで自信を付けてほしい」「負けず嫌いでコツコツがんばるタイプだから、長期の企画に向いている」といった点もポイントだったようです。

今回のプロジェクトに選ばれたときの気持ちをお聞かせください

今回のプロジェクトに選ばれたときの気持ちをお聞かせください
 

プレッシャーや不安はもちろんありました。あとでわかったことですが、周りの方や社長も「重荷すぎないだろうか?」といった心配をしてくださっていたそうです。重たいものを持ったり、大きなものを動かしたり、力が必要な仕事もあるので、「女性だと大変かもしれない」とも思われていたみたいです。

でも私はそれ以上に、「『新しいものを世に出す』という自分の夢が叶うチャンスだ」といった、前向きな気持ちが強かったですね。

今だから言えることですが、選ばれたということは、期待されているということだなと感じます。今まで女性の技術系管理者がいなかったそうなので、私が選ばれたことで、会社の雰囲気が大きく変わったんじゃないかなと思います。

どんな思いで開発に挑みましたか?

どんな思いで開発に挑みましたか?
 

「誰かのためになることをしよう」というのは、常に意識していました。 私たちの仕事は「高性能の製品を作ること」ではなく、「お客様が求めている製品を作ること」です。どんなにいいものを作っても、それを手に取って実際に使う人にとっての「いいもの」でなくては意味がありません。

誰でも使えるものか、必要な機能は揃っているか。逆に、不要な機能や素材でコストを上げていないか…。

作り手の自己満足で終わるのではなく、「お客様に必要とされる、喜ばれるものを作ろう!」という気持ちで挑みました。

開発中に印象に残っているエピソードをお聞かせください。

 

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完成した製品にトラブルが発生したことです。 東京大学大学院工学系研究科・坂田研究室様のほうで使っていただいていたもので、「コードから火花が出た」という連絡があって、上司と慌てて現地へ向かいました。

 

原因は、先方で組み立てていただく際に締めるネジの緩みでした。これは、実際にお客様が使う場面をもっと想定して設計していたら、防げた事態だと思います。

製品化して広まっていけば、さまざまな方が手に取って使うことになります。その中で「誰でも正しく安全に使えるようにする」ということが、お客様第一ということなんだな、と実感しました。

改めて「製品を使うお客様のことを考えて作らなければいけない」と再確認したできごとなので、印象に残っています。

開発中に大変だった・苦労したことはありますか?

 

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納期の管理にとても苦労しました。共同開発なので、いろんなもののスケジュールが厳しい印象でした。通常なら3ヶ月ほどかかる製品を2ヶ月で作らなくてはいけない、なんてことがよくありました。

 

当時は知識も経験も浅かったので、さらに難しかったなと思います。器具の名前も知らない状態からスタートして、先輩方に使い方を教わりながら進めていきました。

すごく丁寧に教えてもらえたので、どんどんノウハウが身につく感覚が楽しかったのですが…当然、ベテランの方には及ばないので、忙しいときは「もっと上手くいくはず」ともどかしい思いをさせてしまったこともありました。

でも、そう思われる自分が悔しくて。最初の頃は、なるべく一人でこなそうと必死だったと思います。先輩方に向かって「手伝わないでくださいね!」と言ってしまったこともありました(笑)

開発中に上手くいった・やりがいを感じた瞬間はありますか?

開発中に上手くいった・やりがいを感じた瞬間はありますか?
 

周りの方に認めてもらえる過程が実感できたときですね。 最初は皆さん「Kさん、大丈夫かな?」といった雰囲気だったのですが、4ヶ月くらい経って最初の製品を作り終えたところで、心配の目が信頼に変わっていったんです。ギリギリながらも納期に間に合わせたことで、大学の方からお礼の声を頂いたことも大きなきっかけだったと思います。

それからは、どんどんスムーズに進む感じがしました。 業界の雰囲気として、寡黙な方やストイックな方も多いのですが、そういった方との話し合いもとても円滑になりました。単純なコミュニケーションだけではなく、仕事の成果で信頼関係を築けたことがひとつの転機でした。

開発中に上手くいった・やりがいを感じた瞬間はありますか?

共同開発を通じて感じたことや、感想をお聞かせください。
 

プロジェクトの目標のひとつとして、「お客様目線の製品を作る」というものがありました。製品の性能を追求すると、どうしても費用が高くなります。そうすると、限られたお客様にしか製品を使っていただくことができません。

そうではなく、「低価格でも必要な設備を導入できる」ということにこだわりました。コストと性能を両立させることで、プロジェクト当初の「お客様に必要とされる、喜ばれるものを作る」が達成できたと思います。

あとは…仕事とプライベートの切り替えの大切さを実感しました(笑) 失敗しても引きずらずに、「次がんばろう!」「大丈夫!」という気持ちで取り組んだので、最後までやり遂げられました。

開発中に上手くいった・やりがいを感じた瞬間はありますか?

今後の目標を教えてください。
 

家庭と仕事を両立させていくことです。 実は、プロジェクト2年目のとき、結婚したことにより私生活が大きく変わりました。通勤時間が伸びたことや家庭に使う時間が増えたこともあって、辞めるかどうかを本気で迷った時期もあったんです。

ですが、会社に相談したところ、時短勤務や時差出勤を提案してくれました。 前例のない措置だったようですが、「会社が昔勝手に決めた規定で、働く人が不便をする必要はない」「せっかくがんばってくれているのに、辞めてしまうのは悲しい」と言ってくださって。大変だったと思いますが、いろんなルールを改めて、柔軟に対応していただきました。

従業員を大切にしてくれている姿勢がとてもうれしかったです。なので、仕事はもちろん、プライベートも充実させて、イキイキ過ごす姿を見てもらいたいです。

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