採用情報

RECRUIT

主任 K.Sさん(2016年⼊社)
学部:技術部
所属:応⽤化学専攻

東京⼤学⼤学院⼯学系研究科・坂⽥研究室様、あいち産業科学技術総合センター(瀬⼾窯業試験場)様とヤマキ電器にて、製品の共同開発プロジェクトを⾏いました。

※本研究は⽣研⽀援センター「知」の集積と活⽤の場による⾰新的技術創造促進事 業(異分野融合発展研究)」の⽀援を受けて⾏いました。

そんな中、⼊社から2年⽬でその能⼒を認められ、研究開発者として⼤抜擢されたKさん。
プロジェクト期間中の3年間のエピソードや、
ヤマキ電器で働きながら感じた会社のことについて聞きました。

MOVIE

共同開発の概要を教えてください

3年の歳⽉をかけて取り組む、
⼤型製品の開発プロジェクトです。

東京⼤学⼤学院⼯学系研究科・坂⽥研究室様で当時研究していた「カーボンナノチューブ」を活⽤したヒーターと、それを使った⼤型乾燥機の製品開発です。

年間で段階的に細かい製品を作って、それを合わせて⼤きな製品にしていきます。1年⽬はヒーター、2年⽬はそれを使った乾燥機、3年⽬はそれをさらに⼤型にしたもの…という形で、約3年間にわたって取り組みました。

東京⼤学⼤学院⼯学系研究科・坂⽥研究室様の⽅から製品の依頼を受け、製作したものをあいち産業科学技術総合センターの瀬⼾窯業試験場(以下、瀬⼾窯業試験場)様にお渡しして計測や分析を⾏う、という⼤きなプロジェクトでした。

具体的にはどのような製品ですか?

従来品の良さを活かしながら、
デメリットを改善したヒーターです。

⾷品を乾燥させるために使う「低温⽤遠⾚外線セラミックヒーター」です。 セラミックヒーターは「エネルギーの消費が少ない」「急速な加熱が可能」というメリットがある⼀⽅で、「対象物によって効率や加熱・乾燥箇所にバラつきが出る」「⽔分を多く含むものには加熱・乾燥時間がかかる」といった弱点を持っていました。

従来のセラミックヒーターが持つ特徴を活かしつつ、デメリットの改善を実現したのが今回の研究開発です。

加熱・乾燥を均等に素早く⾏うために、照射⾯に⼯夫を施しました。幅広い波⻑を持ち、⾼い放射率を誇る「ナノカーボン材料」をスラリー…簡単に⾔えば「セメントのようなのり状のもの」にして、ヒーター表⾯に塗布します。

これにより、⽔分量や形状といった対象物の性質に左右されることなく、効率的な加熱・乾燥が可能になりました。製品試験では、「⾷品のうまみ成分(グルタミン酸)が1.5倍に増加」「2時間の乾燥ののち、従来品と⽐較して、重量の減少が48%から54%へと効率アップ」といった結果が出ています。

共同開発のきっかけを教えてください。

技術と実績のある企業として、
信頼していただいて選ばれました。

はじめは、東京⼤学⼤学院⼯学系研究科・坂⽥研究室様と瀬⼾窯業試験場様の間で⽴ち上がったプロジェクトでした。製品を形にするにあたって、「⾚外線セラミックを取り扱うノウハウを持っている企業」として、瀬⼾窯業試験場様がヤマキ電器の名前を挙げてくださったことがきっかけでした。

研究開発に必要な技術を持っている企業が少ない中で、ご担当の⽅が「ヤマキ電器さんの実績と技術なら⼤丈夫」と⼝添えしてくださったそうです。

どのような経緯で選ばれましたか?

仕事に向き合う姿勢を評価されて、
任せてもらえました。

⼊社当初は製造部で働いていました。なので、開発には関わっていなかったんです。ですが、検査や品質管理のスキルが上がってきたこと、私の仕事に対する姿勢や適性などを評価していただいて、このプロジェクトに参加することになりました。

選んでくださった上司いわく、「新規の開発に関わることで⾃信を付けてほしい」「負けず嫌いでコツコツがんばるタイプだから、⻑期の企画に向いている」といった点もポイントだったようです。

今回のプロジェクトに選ばれたときの気持ちをお聞かせください。

「⾃分の夢が叶うチャンス」という
前向きな気持ちでした。

プレッシャーや不安はもちろんありました。あとでわかったことですが、周りの⽅や社⻑も「重荷すぎないだろうか?」といった⼼配をしてくださっていたそうです。重たいものを持ったり、⼤きなものを動かしたり、⼒が必要な仕事もあるので、「⼥性だと⼤変かもしれない」とも思われていたみたいです。

でも私はそれ以上に、「『新しいものを世に出す』という⾃分の夢が叶うチャンスだ」といった、前向きな気持ちが強かったですね。 今だから⾔えることですが、選ばれたということは、期待されているということだなと感じます

今まで⼥性の技術系管理者がいなかったそうなので、私が選ばれたことで、会社の雰囲気が⼤きく変わったんじゃないかなと思います。

どんな思いで開発に挑みました?

お客様に必要とされる、
喜ばれるものを作りたいです。

「誰かのためになることをしよう」というのは、常に意識していました。 私たちの仕事は「⾼性能の製品を作ること」ではなく、「お客様が求めている製品を作ること」です。 どんなにいいものを作っても、それを⼿に取って実際に使う⼈にとっての「いいもの」でなくては意味がありません。

誰でも使えるものか、必要な機能は揃っているか。逆に、不要な機能や素材でコストを上げていないか…。

作り⼿の⾃⼰満⾜で終わるのではなく、「お客様に必要とされる、喜ばれるものを作ろう!」という気持ちで挑みました。

開発中に印象に残っているエピソードをお聞かせください。

トラブルを通じて気付いた、
“誰でも使える”ことの⼤切さ。

完成した製品にトラブルが発⽣したことです。 東京⼤学⼤学院⼯学系研究科・坂⽥研究室様のほうで使っていただいていたもので、「コードから⽕花が出た」という連絡があって、上司と慌てて現地へ向かいました。

原因は、先⽅で組み⽴てていただく際に締めるネジの緩みでした。これは、実際にお客様が使う場⾯をもっと想定して設計していたら、防げた事態だと思います。

製品化して広まっていけば、さまざまな⽅が⼿に取って使うことになります。その中で「誰でも正しく安全に使えるようにする」ということが、お客様第⼀ということなんだな、と実感しました。

改めて「製品を使うお客様のことを考えて作らなければいけない」と再確認したできごとなので、印象に残っています。

開発中に⼤変だった・苦労したことはありますか?

⾃分の⼒不⾜が悔しくて、
ひたすらにがんばっていました。

納期の管理にとても苦労しました。共同開発なので、いろんなもののスケジュールが厳しい印象でした。通常なら3ヶ⽉ほどかかる製品を2ヶ⽉で作らなくてはいけない、なんてことがよくありました。

当時は知識も経験も浅かったので、さらに難しかったなと思います。器具の名前も知らない状態からスタートして、先輩⽅に使い⽅を教わりながら進めていきました。

すごく丁寧に教えてもらえたので、どんどんノウハウが⾝につく感覚が楽しかったのですが…当然、ベテランの⽅には及ばないので、忙しいときは「もっと上⼿くいくはず」ともどかしい思いをさせてしまったこともありました。

でも、そう思われる⾃分が悔しくて。最初の頃は、なるべく⼀⼈でこなそうと必死だったと思います。先輩⽅に向かって「⼿伝わないでくださいね!」と⾔ってしまったこともありました(笑)

開発中に上⼿くいった・やりがいを感じた瞬間はありますか?

能⼒が認められて、
“仕事の成果”で信頼が築けたことです。

周りの⽅に認めてもらえる過程が実感できたときですね。 最初は皆さん「Kさん、⼤丈夫かな?」といった雰囲気だったのですが、4ヶ⽉くらい経って最初の製品を作り終えたところで、⼼配の⽬が信頼に変わっていったんです。ギリギリながらも納期に間に合わせたことで、⼤学の⽅からお礼の声を頂いたことも⼤きなきっかけだったと思います。

それからは、どんどんスムーズに進む感じがしました。 業界の雰囲気として、寡黙な⽅やストイックな⽅も多いのですが、そういった⽅との話し合いもとても円滑になりました。 単純なコミュニケーションだけではなく、仕事の成果で信頼関係を築けたことがひとつの転機でした。

共同開発を通じて感じたことや、感想をお聞かせください。

「お客様第⼀」という⽬標を⾒失わず、
最後までやり遂げられました。

プロジェクトの⽬標のひとつとして、「お客様⽬線の製品を作る」というものがありました。製品の性能を追求すると、どうしても費⽤が⾼くなります。そうすると、限られたお客様にしか製品を使っていただくことができません。

そうではなく、「低価格でも必要な設備を導⼊できる」ということにこだわりました。コストと性能を両⽴させることで、プロジェクト当初の「お客様に必要とされる、喜ばれるものを作る」が達成できたと思います。

あとは…仕事とプライベートの切り替えの⼤切さを実感しました(笑) 失敗しても引きずらずに、「次がんばろう!」「⼤丈夫!」という気持ちで取り組んだので、最後までやり遂げられました。

今後の⽬標を教えてください。

家庭も仕事も両⽴させて、
皆さんの期待に応えていきたいです。

家庭と仕事を両⽴させていくことです。 実は、プロジェクト2年⽬のとき、結婚したことにより私⽣活が⼤きく変わりました。通勤時間が伸びたことや家庭に使う時間が増えたこともあって、辞めるかどうかを本気で迷った時期もあったんです。

ですが、会社に相談したところ、時短勤務や時差出勤を提案してくれました。 前例のない措置だったようですが、「会社が昔勝⼿に決めた規定で、働く⼈が不便をする必要はない」「せっかくがんばってくれているのに、辞めてしまうのは悲しい」と⾔ってくださって。⼤変だったと思いますが、いろんなルールを改めて、柔軟に対応していただきました。

従業員を⼤切にしてくれている姿勢がとてもうれしかったです。なので、仕事はもちろん、プライベートも充実させて、イキイキ過ごす姿を⾒てもらいたいです。